神戸新聞
▼選手育成策 効果じわり ヴィッセル神戸 “プロ予備軍”ユース大活躍
サッカー・Jリーグ1部(J1)ヴィッセル神戸の育成策が成果を上げつつある。今季はプロ予備軍のユース(高校生)が3年ぶりに関西の頂点に立ち、ジュニアユース(中学生)が初の全国優勝を果たした。有望選手のスカウト体制や人間性重視の指導などが実を結び、チーム底上げへの期待が高まっている。
「『おはようございます』という明るい心、『はい』という素直な心…」。9月下旬の練習前ミーティングで、ユース選手が声をそろえた。続いて、監督の黒田和生さん(60)が「知識や技術は心構え次第で伸びる。心構えは積極性と明朗性で決まる」などと精神面の重要性を説いた。
ヴィッセル神戸は1995年のクラブ創設以来、タイトル争いの経験がない。場当たり的な補強も低迷の原因とされる。このため、2005年に18歳以下の選手を強化する「Jリーグアカデミー神戸育成センター」を組織し、ユース以下の一貫指導やスクール活動など、自前での育成に本腰を入れた。
目玉の一つが、滝川第二高を名門に育てた黒田さんの招請だった。07年4月にフロント入りし、育成センターを統括。今年1月にはユース監督として現場復帰した。
「プロで長く続けるには人間教育が大事」という“黒田イズム”が選手に浸透。献身的なプレーが増え、今年、関西のJリーグユースと強豪高校が集う「プリンスリーグ関西」で優勝した。同大会MVPの崔勝虎選手は「感謝の気持ちや全員で戦う意識が芽生えた」と語る。全日本ユース選手権でも過去最高の16強に入った。
4年前に若年層の専属スカウトを配置して以降、県外の有望選手がユース入りしたことも大きい。
また、ジュニアユースの主力は、県内少年クラブのトップ選手が占め、今年8月の日本クラブユース選手権で初優勝した。地域とのパイプの強まりを示す結果で、野田知監督(40)は「兵庫にとっても大きな優勝」と話す。
コーチ陣も月2回の研修会でユース、ジュニアユースの垣根を越えて話し合うほか、他競技で実績を残した指導者による講義も実施。ユースの長谷部茂利コーチ(38)は「グラウンド外でも学ぶことが多い。風通しがよくなった」と手応えを感じている。
今春にはユース生らの寄宿施設「三木谷ハウス」が、神戸市西区の練習場の近くに完成し、競技に集中できる環境が整った。
好循環が続くが、「まだまだCランクからBランクに上がったばかり」と黒田さんに油断はない。昨秋には、クラブ拠点の西区で普及に取り組む「いぶきプロジェクト」を立ち上げた。子育て中の父親を対象にコーチングの教室を開くなど、地道な活動を展開中で、「小学生を盛り上げることが、財産になる。今後範囲を広げたい」と意気込む。
生え抜きのスターが優勝へ導く。その瞬間を目指し、模索は続く。
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